【寄稿】「aMSaキラーだった男」の咆哮――スマブラDXプレイヤーSanneとaMSaの静かな昂ぶりとその先

ゲストライターのMARINE(@smabrosMARINE)です。

前回の「N道場」記事に引き続き、これで6回目の寄稿となります。本年もよろしくお願い致します。

今もなお記憶に新しい2018年12月2日開催の「ウメブラFINALforWiiU」。

今回は、この大会と合同で開かれた『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の大会「BattleGateWay~SunShine~」のある場面を映し出した1枚の写真を紹介することから始めたいと思います(以下それぞれ『スマブラDX』、「BGWSS」と略記)。

写真の左端に映るSanne選手と右端に映るVGBC|aMSa選手が今回の主人公です。

彼らは「BGWSS」のグランドファイナルで相まみえ雌雄を決するために戦うことになり、その結果として国内『スマブラDX』の競技シーンのマイルストーンとも言える出来事を巻き起こします。

優勝したのはフォックス使いのSanne選手で、彼を最後まで追い詰めた選手がaMSa選手でした。SNS経由で知っている方も少なくないかもしれません。

今回の寄稿ではその結果以上に、このことが内包するある種の物語が膨大な熱量を帯びているということを綴っていきたいと思います。

とてもいい試合で、それから得た感動を文章として残したいという気持ちと、私なんかが語っていいのかという気持ちの間で揺れつつ、筆をとっています。

少しこれまでの寄稿と雰囲気が異なりますが、どうぞ最後までお付き合いください。

では、上にある1枚の写真を手掛かりに私の目線からそれを紹介していきましょう。

BGWSS勝者側決勝

グランドファイナルで戦った両選手はこれに至る前、勝者側決勝戦で拳を交えていました。

ところで、この勝者側決勝というのはダブルイルミネーション形式を採用するトーナメントに含まれるものです。

文字通り、選手は2度負けた時点でその大会での順位を言い渡されることになります。

選手は1度負けると敗者側に駒を動かすことになりますが、そこから敗者側を勝ち上がると勝者側で最後まで勝ち残った選手とグランドファイナルという大舞台に駒を進めます。

敗者側にまわった選手はもう後がなく、他方で勝者側に残っている選手はグランドファイナルを含め大会内で1度負けてもまだチャンスがあります。

なお、敗者側の選手が勝者側の選手をこのステージで負かすことでリセットが生じます。

そしてリセット後はグランドファイナル2が執り行われ「本当の最終決戦」の幕が開くことになります。

このような大会形式のため敗者側に回ることは避けるべきことなのですが、勝負というのは生モノ、どのタイミングで自分が敗者側に回るのかということ自体、選手たちはそもそも事前に覚悟しておく必要があります。

強豪選手になればなるほど、敗者側に回った際のメンタルの調整に長けており、その後の試合で調子を持ち直し勝ち進んでいきます。

さて、話を戻しましょう。

「BGWSS」の勝者側決勝は3-2でSanne選手が取りました*。

これはシーソーゲームで互いに譲らず2-2までもつれこんでの結果で、試合が行われたスクリーン周辺に集まった観戦者たちからは、彼らの操作するキャラクターの俊敏な動きや相手の出方にバッチリと対応した動きに対する感嘆の声があがっていました。

*試合は3本先取で行われました。

勝者側決勝の動画はコチラから▼
BattleGateWay~SunShine~-Sanne(Fox) vs VGBC|aMSa(Yoshi)-WinnersFinal

「ダンッ!」

この試合が終わり両選手が席を離れようとしたそのとき、熱のこもった足音が私の耳に入ってきました。

音が聞こえたと同時にそちらの方へと目をやると、自分に腹を立てながらも次の試合以降を見据えたaMSa選手の真剣な表情がそこにありました。そして彼は、メンタルと戦略の調整へと向かっていきます。

この試合の後、Sanne選手と話す機会があったので次のように尋ねてみました。

「敗者側から登ってきたaMSa選手は勝者側決勝の結果を踏まえて、さらなるSanne対策をしてくると思うんだけど、やっぱりそうだよね?」

「うん。勝者側決勝ではこっちのaMSaへの対策が機能してね。それで試合を上手く運んで勝ったんだけど、ここからまたaMSaは俺を対策はしてくるはずだよ。もちろんだ」。

あまり多くの言葉は交わしませんでしたが、こう答えるSanne選手もまた、aMSa選手による直近の試合を踏まえた反撃を見据えているといういことが伝わってきました。

つまり、この瞬間、両選手とも違う視点から「優勝」という同じものを目指して、後の試合に備えていたわけです。

今回の記事の冒頭で紹介した写真、それはこのタイミングで撮影された1枚でした。

両者とも先程試合を終え感情的にも昂ぶっていたにも関わらず、隣合わせのブラウン管テレビを使って自身の操作を見直している場面です。

私ならどちらの立場であっても、出来るだけ集中力を保つために相手と物理的な距離をとっていたかと思います。

彼らが座る席からはあくまで冷静にそして確かなリズムで鳴らされるコントローラー操作音が聞こえてきました。

*その後の両選手のトーナメントの動きは以下の通り(上段が勝者側で下段が敗者側、また、緑に色づけされた選手が該当する試合の勝者で数字は勝ち取ったセット数を示しています)。

それぞれトーナメントを勝ち進みグランドファイナルにて再会することになります。

SanneとaMSa:2人の関係性

ここで少しだけ、彼らの関係性を紹介したいと思います。あの写真から得ることのできる感情がより豊かなものになるでしょう。

『スマブラDX』北日本勢

Sanne選手とaMSa選手はともに東北大学に通う同級生でした。もともと交流のなかった彼らは『スマブラDX』を通じ友人になります。

ここに北海道大学の学生だったシーク選手と北日本に住んでいたShippu選手を加え、地域的な括りで彼らは「北日本勢」*と呼ばれることがあります。

*「北日本勢」にはここで言及した以外のプレイヤーも多く含まれますが主題から離れてしまうので割愛します。

彼らのプレイヤーとしての力量は相当なもので、発売から17年以上続く『スマブラDX』の国内競技シーンの一時代を代表する世代と彼らを称しても全く問題にならないほどです。

競技としてこのゲームに興味を持ち動画を漁ると遅かれ早かれ絶対に彼らに遭遇することになるということは、その証拠。

私も彼らに直接会うより彼らの名前を知る方が早かったことを今でも覚えています。

そんな「北日本勢」の一角を担う選手の中でも、同じ大学に通い、それゆえ必然的にそのスマブラを間近で観察し共に切磋琢磨することになっていたSanne選手とaMSa選手。彼らは、自身のスマブラのキャリアにおいてライバルの関係にあります。

私たちが彼らのこの関係性を想像するのを助ける文章を、『日本人初プロスマブラ―の軌跡』(aMSa著、2016年、三才ブックス、以下「参照文献①」と略記)と『WELLPLAYED JOURNAL』に掲載された「ヨッシーへのこだわりと大学時代の武者修行―—日本人初のプロスマブラーaMSaに訊く【前編】」(すいのこ著、2018年、以下「参照文献②」と略記)に見つけることができます。

「彼とはお互い違うコミュニティで大学生活をおくっていたこともあり、顔を合わせるのはせいぜい学科全体のイベントがあったとき程度。赤の他人といってもよいであろう〔中略〕フォックス使いのSanneとの対戦結果は五分と五分。衝撃だった」。*

(参照文献①p.83)

*「スマブラガチ勢入りへ」で語られている一節。「ガチ勢」というのは、順位のつく競技としてのトーナメントに参加するプレイヤーたちの総称。

「僕が負けたときの相手は、ガチ勢になるキッカケになった同じ大学のSanneというプレイヤーでした〔執筆者中略〕フリー対戦などで上位のプレイヤーと良い対戦が出来て、手ごたえを感じられました」。*

(参照文献②「ヨッシーへのこだわりと大会への意欲」の箇所)

*同誌面においてインタビュアーを務めるすいのこ氏の「ガチ勢になった当時を振り返ってみていかがですか」という質問への返答。

2017年に見るSanne vs aMSa

aMSa選手はテクニカルかつ独創的なプレイスタイルを持ち味とし観客を魅了する『スマブラDX』史上にその名を刻み続けている赤ヨッシー使いです。

Apex2014という海外大会での活躍をきっかけとしてアメリカの大手配信会社VGBootCampに所属する同ゲーム初の日本人スポンサードプレイヤーになりました。

国内での活躍はもちろんのこと、海外の招待大会であるSmashSummit6では世界ランキング1位のHungryBox選手を下すなど、彼は世界をまたにかけ活躍しています。現在はコーチのカイトさんとともに二人三脚でそのキャリアを形成中です。

Sanne選手は高い操作精度が求められるフォックスをメインとし綺麗なプレイスタイルを持ち味とする国内の強豪選手です。

着実に実力をつけ続け2018年の『スマブラDX』界隈で最も国内大会に出場し好成績をおさめ、クロブラ2周年記念大会での優勝を通じて『スマブラforWiiU』(ひいては『スマブラSPECIAL』)界隈でもその名を知られ始めているプレイヤーの1人。

フィールドは違えど『スマブラDX』の競技シーンで活躍する2人の選手。そんな彼らの戦績を振り返ると、独自の関係性がさらに見えてきます。

その独自の関係性とは「Sanne選手がaMSaキラー『だった』」というものです。

2017年の国内ランキングを見てみるとその意味がわかります。同年の直接対決の戦績においてSanne選手に軍配が上がっています。

以前オフ会でaMSa選手と一緒になった際にも、彼本人の口から同様のことが語られました。

最も身近でaMSa選手を見てきたSanne選手は世界で活躍するヨッシーに対抗する術を持っていたのです。

しかしながら、この関係が大きく変わったことがわかる大会があります。「第8回中部スマブラDX大会(2018年4月27日)」です。

というのも、この大会においてaMSa選手は3-1でSanne選手に勝利しているからです。

そのときのツイートはこちら。

誤解を恐れずに一言で表現すると、「aMSaキラーとしてのSanne」はこの時点で過去のものになってしまったわけです。

「第8回中部スマブラDX大会」から数か月後に開催された国内最大規模の大会BGW21(2018年7月22日)の勝者側準決勝、ここでもaMSa選手は3-0でSanne選手を退け、そのままの勢いで優勝しています(トーナメント表)。

aMSa選手はこの時期、「aMSaキラー」としてのSanne選手をしっかりと退け、自身の成長を国内『スマブラDX』の競技シーンに力強く証明しました。

BGWSSグランドファイナル

正式にコーチに就任したカイトさんと共に二人三脚で奮闘し2018年それまで以上の活躍をみせたaMSa選手と、国内大会に出続け自身の成績を塗り替え続けaMSa選手とは異なる仕方で『スマブラDX』に向き合い続けてきたSanne選手。

『スマブラDX』の競技シーンで一時代を築き現在においてもなお強豪プレイヤーである元「北日本勢」プレイヤー、大学の友人そしてライバルとして、対峙し続けていた両選手。

そんな彼らが迎えた大舞台が2018年末の「BGWSS」グランドファイナルでした。

敗者側から駒を進めたaMSa選手は3-2でグランドファイナルをリセットしグランドファイナル2すなわち「本当の最終決戦」へとSanne選手を引きずり出します。

これで後がなくなったSanne選手と猛攻の手を緩めないaMSa選手との間で緊張の糸がピンと張りつめた試合が、私たちの眼前で展開されました(トーナメント表)。

配信の都合上、すでに紹介した勝者側決勝のような形での試合動画は現存していません。

文字通り「幻の試合」です。

そこで、スマートフォンで撮影した編集動画を紹介することでその代わりとさせていただければと思います。

『スマブラDX』部門のこのグランドファイナルに『ARMS』など他部門の選手や観戦者たちが集まり、特別な雰囲気が漂う中で試合の行方が見守られていました。

冒頭で述べたように、優勝者はSanne選手。

「aMSaキラー『だった』」Sanne選手は、この大舞台を制し見事1位の座に輝き、自身のフォックス使いとしての成長と今もなお「aMSaキラー」としての高い能力を持っているということを見せつけるに至ったのです。

彼らの関係においても、国内の競技シーンにおいても、この試合は大きな意味を持つものになりました。

勝利を決めたその瞬間の雄叫びとその後に泣き崩れる彼の姿を見れば、この試合における勝利が彼にとってどれだけ大きなものであったのかは想像に難くないでしょう。

私はしばらく両選手に声をかけることができないほどに、圧倒されていました。

ここまで駆け足で紹介してきた関係性を背景にこの試合について考えると、簡単には言葉にならなかったわけです。

また、これからも『スマブラDX』の競技シーンが新たなステージへと進むことを予感させる試合は、ベテラン選手である彼らを瑞々しく感じさせてくれさえもしました。

さて、あまり文章にしても零れ落ちるものがありますから、あの写真とグランドファイナルを前にして口に出されたSanne選手の言葉を再度引用するにとどめて、今回の寄稿を終りたいと思います。

「うん。勝者側決勝ではこっちのaMSaへの対策が機能してね。それで試合を上手く運んで勝ったんだけど、ここからまたaMSaは俺を対策はしてくるはずだよ。もちろんだ」。

————彼らの戦いは、まだまだ終わらない。

MARINE(ゲストライター)

書いた人:MARINE(ゲストライター)

ゲストライター。スマブラDXを主戦場とするプレイヤーであり、自身のブログ「GCC's blog」を運営している。

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