緊張して勝てなくなる…スポーツから学ぶ上達のためのメンタルコントロール

コラム

こんにちは、Shogunです!

突然ですが、対戦中(特に大会等での重要な試合)にそれまでの自分の精神状態に対して明らかに流れが悪い方向に進むことはよくあると思います。

また、突然頭が真っ白になったり、色々な悪い流れが頭をよぎったり…。これらは一般的には”メンタル面の強さ”と括られますが、良い流れも悪い流れも原因は様々だと思います。

自分は普段あまり本を読まないんですが、最近読んだ本の中でこういったメンタル面の話で、対戦ゲームにも適用できそうな面白い話があったので、記事を通して共有できればと思います。よろしくお願いします!

「考えすぎ」が呼ぶ悲劇~スポーツの実例から

テニスで世界ランキング1位のラファエル・ナダルは、試合中のメンタル面の問題について、こう語ったそうです。

「試合の中で重要な局面になると、『フォアハンドはどうやって打てば良いのだろう』と考えはじめ、どこへ打ったら良いのか等を考えられなくなった」

また、女子の元世界一位アナ・イノバビッチは、試合中にサーブミスを連発してしまう時期がありましたが、そのような状態に陥った時の心理状態を次のように語っています。

「例えば階段を下りる時、まずは片足を上げて、どっちの足に重心をかけて…等と考えていたら転んでしまうでしょう?サーブが入らない時はそういう感覚になってしまう」

自分自身もスマブラで同じような経験があります。「悪い流れになっているけど、この流れを断ち切るためにどこでどういった技で差し込もう」等と考えることがよくあります。

それに対して自分は、「大会等で流れが悪くなっている時に頭が真っ白になって何も考えられなくなるのが精神的には良くないことで、上記のように戦略を冷静に頭で考えられているのだからむしろ良いことだろう」と思っていました。

しかし、やはり試合中の雑念や意識というのは時にパフォーマンスを低下させる要因になっているようです。

どのような意識がパフォーマンスを低下させるのか~実験結果をご紹介

雑念や意識というのは種類は様々です。一体どのような意識がパフォーマンスを低下させるのか、もう少し詳しく見ましょう。

心理学・神経学者のサイアン・ベイロックが2004年に発表した論文では、以下の2つの実験を紹介しています。

実験1

実験対象:熟練の上級ゴルファー
実験内容:異なる3点に設けられたポジションからターゲットに向かって、複数パターンでの条件を付けて「可能な限りボールをターゲットに近づけること」を目標にパットを打たせ、ターゲットとボールの距離を計測
パターン①:パフォーマンス中にランダムで短音を再生し、音が聞こえた瞬間に「鳴った」と言わせながらパットを打たせる
パターン②:スイングが終了してクラブの動きが止まったその瞬間に「止まった」と言わせながらパットを打たせる
実験結果パターン①においては、通常状態でパットを打たせた時とほぼ同等のスコアが出たが、パターン②においては大きく悪化した

実験2

実験対象:熟練のサッカー上級者10名と、サッカー初~中級者10名
実験内容:1.5メートルごとに立てられたコーンの間を複数パターンでの条件を付けて片足のみでジグザグにドリブルし、タイムを計測
パターン①(技術集中課題と表現):ドリブル中にランダムに短音を鳴らし、音が鳴った瞬間に足の甲のアウトサイドかインサイドのどちらでボールを蹴ったかを声に出させる
パターン②(二重課題と表現):ドリブル中に一音節の単語を無作為に複数回再生し、それを聞くたびにその単語を声に出させる
実験結果は以下の通りです。(ちょっと文字にするのは複雑なので図にします)

実験結果サマリと想定仮説

①上級者にとって、プレイと関係する意識は、プレイと無関係な意識と比べてパフォーマンスを低下させやすい
②初心者~中級者にとって、プレイと無関係な意識は、プレイと関係する意識と比べてパフォーマンスを低下させやすい

想定仮説:上級者にとって、長年のプレイで感覚的に身体に覚え込ませていた動作に対し、それに関連する意識を頭に入れると感覚と意識がバッティングし、パフォーマンスが落ちる。初心者は、頭の中に感覚が宿っておらず、一つ一つ意識しながら動作を進めるため、プレイと無関係な意識がパフォーマンスを落とした

対戦ゲームとどのように関わるか…?

©️Darimoko

これらは自分の経験と照らし合わせた際に非常に納得のいく部分があります。

例えば、自分は配信台で対戦している時、良いプレイをしている時ほど実況や解説の声がよく聞こえます。

対戦に集中しなければいけないのに、これは良くない傾向じゃないかと思っていましたが、プレイ自体に没頭した結果、外部の情報が自分の中に入ってきてもパフォーマンスが落ちなかったんだと思います。

対して、一つ上の見出しでも言った通り、「悪い流れになっているけど、この流れを断ち切るためにどこでどういった技で差し込もう」等と考えることは長年の経験から来る感覚を狂わせる不要な意識だと言えると思います。

大会中にこういった心境になると、「冷静なはずなのに負ける」とよく考えたものですが、これら実験結果とそこから導かれる仮説とを合わせて考えると納得がいきます。

習熟度に応じた、上達のための意識の使い方

これらの実験結果は、試合中のパフォーマンスを落とす意識面での要因だけでなく、プレイヤーレベルに応じた上達方法にも示唆を与えるかと個人的に思っています。

個々人によって差は当然あるので一概には言えませんが、傾向としては「初心者は一つ一つの動作に意識を向けて、頭を使ってパフォームする」「経験豊富な上級者にとって、一つ一つの動作や試合の流れというのは頭の中に染みついているため、それを感覚的に安定して引き出すためのメンタルコントロールが重要」ということが言えるかと思います。

当然、「初心者とは何か、上級者とは何か」について明確な定義をしないと危険な結論にもなり得ます。

本質的には正しいにも拘らず、言葉が先に走ってしまって、初心者・上級者という言葉に対しての自己認識がずれた結果、誤ったことをしてしまう可能性があるためです。

一旦ここで自分を上級者としておくと、自分は今まで技術と精神の2つで考えるとひたすら技術のみを追求していたように思います。しかし、その技術を安定して引き出すためのメンタルコントロールという部分については疎かにしていました。

本記事で説明した結論(というか仮説)に基づくと、自分にとって必要な部分はまさにそこかなぁと思わされました。

まとめ

普段スマブラをする中で、「こういうところが良くないのかなぁ」とか「次からこうしよう」とか色々考えたりするわけですが、この自分の中でのロジックに従った話だけでなく、外部からの客観的数値を基にした知見が自分の感覚と一致していると「やっぱりこの考えって正しかったんだ」と思ったり、逆に一致していないと「自分の考えこの部分は間違っているな」とか分かったりします。

そういうことって、結構面白いことだなと思ってます。本はあまり読むのが好きじゃないんですが、自分のゲーム対戦における考え方とリンクするようなものは、時々見るようにしています。また何か新しい発見があれば、記事として書くのも面白いかなぁと思ってるので、引き続きよろしくお願いします。

新作の情報で賑わう中、こういった自分の考えを前面に押し出した日記で恐縮ですが、読んで頂きありがとうございました。

引用文献:
SL Beilock, BI Bertenthal, AM McCoy, TH Carr “Haste does not always make waste: Expertise, direction of attention, and speed versus accuracy in performing sensorimotor skills”
参考文献:
勝てる脳、負ける脳(集英社新書)

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